マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン – 緻密な轟音の海に溺れる

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)はシューゲイザー界の雄だ。2枚のアルバム『イズント・エニシング(Isn’t Anything)』と『ラヴレス(Loveless)』は永遠に残るだろう。このサイトのサブタイトルを「Feed Me With Your Kiss」とした。1988年に発表されたEPから頂いた。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは不快な爆音を心地よい快感に変えたバンドだ。おそらくは、ケヴィン・シールズ(Kevin Shields)の頭に鳴っている音たちをマスターテープに残そうとしていたように感じる。でなければ、クリエイション・レコーズ(Creation Records)をぶっ潰すぐらいの時間をかけてスタジオで録音なんてしていなかったはずだ。それまでのオルタナティヴな音楽は偶然性を重視していた。

「Feed Me With Your Kiss」と、同年に発表された「You Made Me Realise」はマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの分岐点だった。ノイズにまみれたギターの洪水というサウンドが確立された。2枚ともジャケットのセンスが抜群にいい。人物を扱ったモチーフなのに、どちらもまるで抽象的な印象を与える。

2012年に『Ep’s 1988-1991』が発売された。「You Made Me Realise」「Feed Me With Your Kiss」「Glider」「Tremolo」、それに未発表音源を加えたリマスター盤だ。リマスタリングは最小限に抑えられていて、オリジナルの空気が壊れていない。もちろん購入した。

まさか、本当に過去のリマスター盤が出るとは思っていなかった。信用していなかった。これまでも「狼が来たぞ」的なアナウンスが何度かあったからね。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが産み出した緻密な轟音の海に溺れることができるのは最高だ。何度聴いても、ゆっくりと海の底に沈んでいける。最高に気持ちいい。いつ聴いても、音像に溶ける。