「交響詩篇エウレカセブン」- 音楽マニアをくすぐるサブタイトルたち(後編)

前編はこちら。

2005年に放送されたアニメ「交響詩篇エウレカセブン」では過去のアニメだけでなく、映画やSF小説、漫画、テクノ系音楽へのオマージュが散りばめられていた。 第1話のサブタイトルは「ブルー...

後半のクライマックスともいえる第48話のサブタイルは「バレエ・メカニック」

もうひとつ、高い評価を受けているのが第48話だろう。第26話がキュンなら、この回は泣きの回だ。第26話が「男の子」回なら、第48話は「女の子」回になる。後半のクライマックスともいえる第48話のサブタイルは「バレエ・メカニック」。

「バレエ・メカニック」の元ネタは2つ考えられる。

1つは、映画「バレエ・メカニック」(フェルナン・レジェ監督)。フランスの画家なのだけど、1924年に実験的なモノクロ映画を撮った。今、観ても、刺激の鮮度は落ちていない。

もう1つは、坂本龍一の曲「バレエ・メカニック(Ballet Me’canique)」だ。6枚目のソロ『未来派野郎』に収録。この曲名は初期YMOように映画からではなく、ジョージ・アンタイルの代表曲からインスパイアされたらしい。

おそらく、元ネタは坂本龍一の方だと勝手に思っている。

この坂本龍一の曲。元は「WONDER TRIP LOVER」(岡田有希子)に提供したものをセルフカバーしたものだ。後に、中谷美紀の「クロニック・ラヴ」として再度、カバーされた。なんか、複雑だな。TVドラマ「ケイゾク」の主題歌としてヒットしたので、ある世代には聞き覚えのある人も多いと思う。

少し脱線する。

個人的に「ケイゾク」好きで、「ケイゾク2」と言われるドラマ「SPEC」も期待を裏切らない出来だった。どちらも毎週、欠かさず見ていた。そして、どんなドラマや映画を観ても、中谷美紀=柴田(役名)のイメージが未だに抜けない。

「クロニック・ラヴ」は『私生活』(中谷美紀)に収録されているので、こちらの方でぜひ。エレクトロニカ寄りの良質なアルバムなので、一時期、よく聴いていた。

SFならではの専門用語にも音楽マニアをくすぐる仕掛けが数多く、散りばめられていて萌える

「交響詩篇エウレカセブン」はジャンル的にはSFロボットアニメになる。少し違和感があるけれどね。ということでSFならではの専門用語が出てくる。そこにも音楽系の元ネタが含まれていて、さらに、くすぐられてしまう。

ヒト型の戦闘マシンが出てくる。名前はLFO。LFOはシンセサイザー用語だ。よくツマミに書いてある。ただ、LFOはテクノ・ユニット名でもあるので、こちらからの引用かもしれない。ユニットの1人、マーク・ベルはビョークのプロデューサーとして最も名前を知られているのかな。

また、軍用のLFOはKLFだ。KLFといえば、農場みたいなジャケット『チル・アウト(Chill Out )』を出したザ・ケイエルエフ(The KLF)。

主人公とヒロインが搭乗するLFOにはニルヴァーシュと名付けられている。もちろん、仏教用語の涅槃だけど、やはり、ここはニルヴァーナをもじったものだろう。

その他に出てくるLFOの名前が、「type B303 デビルフィッシュ」「type R505」「type R606」「type R808」「type R909」「SH-101」「type MS10」「type MS20」「VC10」「SL-1200MkI」「SL-1200MkII」。

元ネタは…それぞれ、ローランド社のベースマシンTB-303や、リズムマシンTR808などのTRシリーズ。同じくローランドのキーボードSH-101。コルグのシンセサイザーMS20。テクニクスのレコードプレーヤーであるSL-1200シリーズ。

まだ、ある。

過去に世界を襲った大災害の名前が「サマー・オブ・ラブ」。途中から出てくる悪役?が目指すのがその再来の「セカンド・サマー・オブ・ラブ」。これ1960年代半ばと1980年代終わり頃に起こった音楽の絡んだムーブメント、そのものだ。

まだ、まだ、あるのだけど、このあたりで止めておく。キリがない。

第1話と幻の第51話が繋がっていて、第50話(最終回)の挿入歌にも音楽マニアをくすぐる仕掛けが

挿入歌にも、うまい仕掛けが刷りこまれている。

第1話を始めとして何話かに同じ曲が使われていた。SUPERCAR(スーパーカー)の「STORYWRITER(ストーリーライター)」。アニメ放送前に解散してしまった。

その後、元メンバーの中村弘二(ナカコー)は続編の「エウレカセブンAO」で音楽担当をする。しっかりと自分の曲を、また、挿入歌にしている。「エウレカセブンAO」そのものは前作を超える出来ではなかったのが残念だったけどね。

第50話「星に願いを」では「虹」(電気グルーヴ)が挿入歌として使われていた。5枚目の『DRAGON(ドラゴン)』最後の曲でシングルにもなった。ドイツのレーベルからもリミックス盤が発売されている。

とても、美味しい場面での挿入歌だった。

これ、さりげなく、第1話と繋がっている。電気グルーヴのメンバーである石野卓球が「ブルーマンデー」好きで、ピエール瀧は卓球の家でこれを聞いて、まさしく身体に電気が走ったそうだ。

この曲がなければ出会いなんてなかった可能性もあった。電気グルーヴは存在しなかったかもしれない。なんと素晴らしい演出。最終話に「虹」を選んだスタッフに拍手を捧げたい。

実は、第51話がある。第50話の続きではない。元々はファン向けのイベント用に作られた総集編みたいなものだ。2012年、続編の放送前に宣伝を兼ねてテレビでも放映された。これも、さらに第1話と繋がっている。

サブタイトルは「ニュー・オーダー」。

もう、「交響詩篇エウレカセブン」のスタッフ、遊びすぎ。やり過ぎとしか言いようがない。このオマージュは音楽マニアへの挑戦状のように見える。決してキライじゃない遊びだけどね。こういう遊びが実現できる「やり過ぎ」……素敵すぎる。

愛がなければオマージュはできない

このアニメのテーマは愛だ。しかも純粋な愛。ピュアな感情を忘れてはいけないことを思い出させてくれる。物語も仕掛けも。日本語にすると照れくさい「愛」だけど、時にはストレートに向き合わないとね。

※中谷美紀の「私生活」。女優であるとか、坂本龍一プロデュースとか、ドラマの主題歌とか、そんなことを抜きにして、とても良いアルバムだと思う。

※TV版「エウレカセブン」のBlu-rayボックス